特殊清掃を検討している、遺体から発生する悪臭に困っているみなさんへ。
この文章では、特殊清掃における死臭の原因や臭いの成分、そして臭いを消すための具体的な方法や手順を解説します。
特殊清掃とは、孤独死や自殺現場、病死など遺体から出てくる血液や体液、髪の毛、皮膚などが付着した床や壁を清掃し、さらに死臭を消臭・脱臭、除菌する作業のことです。
特に臭いに関しては、近隣の迷惑や、次に人が住めるようにしなくてはならないため、消臭・脱臭は特殊清掃において最も重要な作業の一つです。
遺体は、夏場では2~3日、冬場では1週間~10日(暖房時にはもっと早い)で腐敗が始まり、それに伴って腐敗臭、いわゆる死臭も激しさを増していきます。
死臭は、様々な悪臭成分が複雑に混ざり合ったもので、その成分は遺体の状態や環境によって異なります。
死臭の主な成分は、アンモニア、トリメチルアミン、インドール、スカトール、メンタチオール(メチルメルカプタン)、硫化水素、揮発性アミン、プトレシン、酪酸(ブタン酸)、吉草酸、カダベリン、プロピオン酸(脂肪酸)などです。
これらの成分は、それぞれ独特の臭いを持ち、複合的に作用することで、あの強烈な死臭を作り出します。
死臭は、くさやの干物やチーズ、生ゴミが腐ったニオイに近いと言われています。
また、アンモニアは尿の臭い、硫化水素やインドール、スカトールなどは糞便の臭い、吉草酸の中のイソ吉草酸は足の裏の臭いの成分として有名です。
死臭の中で特に悪臭が高い成分は、カダベリン、プトレシン、酪酸、メンタチオールです。
これらの成分は、腐敗臭の代表格であり、特にカダベリンとプトレシンは、ほとんどの動物が逃げ出すほどの悪臭で、1885年にドイツ人医師ルードウィッヒ・ブリーガーによって初めて発見されました。
これらの分子は、アミノ酸のリシンとメチオニンがそれぞれ分解するときに発生します。
特殊清掃における死臭の消臭は、決して簡単な作業ではありません。
死臭は非常に強く、様々な場所に染み込みやすいからです。
そのため、プロの特殊清掃業者に依頼することを強くおすすめします。
しかし、自分で少しでも臭いを軽減したいという場合は、以下の手順を参考に、適切な対策を行うようにしてください。
まずは、室内の本格消臭処理に入る前に、遺品類を整理し、撤去しなければなりません。
遺品や家具に死臭が染みついている場合、これらのものを残したまま消臭作業を行っても、臭いはなかなか消えません。
遺品は故人の財産なので、管理会社や大家さんが勝手に処分することは法的にできません。
親族や相続人に、必要な物や重要な物、あるいは思い出の品などの選別・保管をしていただき、不要遺品の処分についても承諾を得る必要があります。
次に、殺虫・消毒作業を行います。
室内作業がスムーズにできるよう、ハエなどを除去するために殺虫剤を噴霧します。
このときの殺虫剤は市販の殺虫スプレーで十分です。
また、感染を防ぐために、殺菌消毒剤を使用します。
殺菌消毒剤は、薬局やネットで購入できる、塩化ベンザルコニウムや安定化二酸化塩素などが有効です。
使用上の注意をよく守り、園芸用の噴霧器などで散布してください。
殺菌消毒剤は人体に悪影響を及ぼす可能性があるので、防護マスク着用など安全対策を行なってください。
ここから消臭・脱臭作業に入ります。
コロンタブレット(気体消臭剤)、コロンパウダー(粉状消臭剤)、コロン消臭バスター(液体消臭剤)など市販の消臭剤を駆使して部屋を消臭していきます。
死臭は残りやすいので、消臭剤は多めに使っていくのがポイントです。
しかし、プロの業者は、まったく違う複数の薬品を使用していますので、注意が必要です。
次に、体液、血液、汚物などの拭き取り作業に入ります。
このとき、体液が付着浸透した床や壁面は、拭き取り清掃だけでは、腐敗臭は消えないので、はがして撤去します。
汚染物が付着していない部分でも、たとえば壁のクロスなどが死臭を吸着している場合、交換が必要です。
オゾン発生器は、オゾンガスを発生させて、空気中の悪臭成分を分解する効果があります。
死臭にも効果があると言われていますが、人体にも影響を与える可能性があるため、使用する際は換気を十分に行い、長時間使用は避けてください。
但し、市販のオゾン発生器は、安価ですが、オゾン発生量が非常に少ないので、十分な効果が得られないかもしれません。
またプロの業者は、オゾン濃度を更に上げる薬剤を併用して使用いたします。
特殊清掃における死臭は、様々な悪臭成分が複雑に混ざり合ったもので、その臭いは非常に強く、様々な場所に染み込みやすいです。
死臭を消すためには、遺品整理・撤去、殺虫・消毒、消臭・脱臭、拭き取り・臭いがしみ込んだ壁と床をはがす、オゾン発生器による消臭など、複数の方法を組み合わせる必要があります。
自分で対処するのは難しい場合も多いので、プロの特殊清掃業者に依頼することを強くおすすめします。